調査報告

韓国語資料5本の鑑定書
——「実績」は本物か、事業者は実在するか

広島市内でのホテル開発の話に伴い「過去実績」として提示された韓国語PDF5本(計125ページ)を全ページ読解し、公開情報と突き合わせた結果の報告。

2026年8月21日作成|AIによる読解・翻訳+公開Web情報調査(韓国語・日本語・英語)

0結論

広島のホテル計画の資料は、5本の中に1枚もない

5本すべてが韓国国内の別案件(ソウル3案件+大邱1案件)の資料で、用途はアパート・オフィステル(事務所兼用住宅)。125ページ中、日本・広島・ホテルへの言及はゼロ。

「実績」として完工まで裏が取れた案件はゼロ

4案件を公開情報(報道・公示)と突き合わせたが、地番・規模まで一致して「実際に建った」と確認できたものはない。しかも5本は発行元がバラバラの寄せ集めで、「誰の実績なのか」を示す事業者名がどこにもつながらない

唯一の新出企業「PACIFIC PROPERTY」は、Web上に存在の痕跡がない

大邱の投資勧誘資料の発行元。韓国の電子公示・求人・事業者番号照会・報道のどこにも出てこない。実在の確認には韓国の法人登記簿の照会が必要(下の§2)。

1事業者の信用鑑定——資料に登場する法人と実在確認

今回の本丸。資料に名前が出てくる法人を全部拾い、公開情報で実在・実績を確認した。

法人資料内での立場公開情報での確認結果
PACIFIC PROPERTY퍼시픽프라퍼티 大邱資料の発行元(投資勧誘の主体) 痕跡ゼロ
韓国の電子公示(DART)・求人・事業者番号照会・報道すべてゼロ件。類似名の別会社は複数あるが関連なし。
IGIS資産運用이지스자산운용 清潭ティーザーの発行元 実在(大手)
韓国最大級の不動産資産運用会社。ただし当該文書は「投資審議委員会未承認の草案」と表紙に自己申告した2018年の紙で、同社の与信を今回の話に接続する根拠にはならない。
(株)ソギョン建築士事務所(주)서경건축사사무소 論峴洞図面の設計者 実在
ソウルの建築設計事務所として実在。ただし設計者が実在することと、その図面を第三者が「自分の実績」として配ってよいことは別問題。
ハンファ建設・大宇建設한화건설・대우건설 大邱資料に添付された「施工参加意向書」の発出者 実在するが非拘束
大手として実在。ただし意向書は「土地確保・許認可完了」を前提条件とする撤回可能・6か月失効の文書で、施工の約束ではない(§4)。
清潭洞128-4の建築主・設計者 審議申請書の当事者のはず 記載なし
21ページのどこにも法人名・個人名がない。

ここから言えること

「その会社」——広島の開発を持ち込んでいる事業者——の名前は、5本のどこにも出てこない。つまりこの資料は、渡してきた側と実績とをつなぐ鎖が最初から切れており、実績の証明としての価値がない。

地面師かどうかの断定は材料不足でできない。ただし「実績を求めたら、検証しづらい外国語の・他人名義の・古い草案が出てきた」というのは、実績偽装の典型的な出方と矛盾しない。

※「痕跡ゼロ」=Web検索で見つからなかったという意味で、不存在の証明ではない。韓国は法人登記簿謄本・国税庁ホームタックスの事業者登録照会で法人の実在が正式に確認でき、建築行政システム「세움터(セウムト)」で地番から建築許可・使用承認を照会できる。相手が韓国実績を主張するなら、この照会に耐える情報(正式法人名・地番)を出させるのが最短。

2渡された5本の正体

#ファイル正体対象地・用途日付
1개요.pdf1ページ設計概要書(図番A-006)ソウル江南区論峴洞106番地外アパート29世帯+オフィステル11戸、地下4階/地上22階2018年
2전체평면도.pdf13ページ同案件の各階平面図(A-039〜051)同上2018年
3청담동128…심의도서21ページ・スキャン建築計画審議申請書ソウル江南区清潭洞128-4外アパート18戸、地下2階/地上12階2019.10.10※ファイル名は2021.12.23
4청담…Teaser.pdf40ページ投資家向け概要書(ティーザー)ソウル江南区清潭洞82-7(暁星ヴィラ敷地)共同住宅56戸+店舗等225室、地下5階〜地上7階の2棟2018.07
5서대구달성서재1차.pdf50ページ投資家向け概要書(DRAFT印付き)大邱広域市達城郡多斯邑書斎里875一円アパート513世帯+オフィステル76室、最高39階2021.08.25
資料の鮮度——文書の日付と現在の距離
20182020202220242026 #1 #2 #4 2018 図面・清潭 #3 2019.10 審議 #5 2021.08 大邱 受領 2026.08

最も新しい文書でも受領の約5年前、図面は約8年前。開発の世界では地価・工事費・許認可の前提がすべて変わっている年数で、現在の事業の裏付けとしては古すぎる。

34案件は実際に建ったのか——公開情報との突合

案件実在・完工の裏付け詳細
論峴洞106#1 #2取れず地番・規模が一致する報道・公示が見つからない。設計事務所は実在。
清潭洞128-4#3取れず該当する審議の記録・報道が見つからない。
清潭洞82-7 暁星ヴィラ#4半分だけ「暁星ヴィラの再建築」自体は実在し完工(2019年入居)。ただし報道の地番とティーザーの地番(82-7)が一致せず、この文書の計画が実行された裏付けは取れない
大邱 書斎里875#5取れず該当事業の報道・公示が見つからない。

※Web検索(韓国語・日本語・英語)の範囲。「取れず」=不存在の証明ではない。白黒つけるなら세움터での地番照会(§1末尾)。

4各文書のひっかかり(全ページ読解の所見)

#1 #2論峴洞の図面——本物らしいが、抜粋で、他人名義
  • 整った実務CAD図で、偽造には見えない。
  • ただし図面一式(A-001〜051以上)のうち概要1枚+平面13枚だけの抜粋。配置図・立面図・断面図・構造図がない。
  • 工事名の物件名が「OO住商複合」と伏字。2018年の他社(ソギョン建築士事務所)の設計図であり、これを第三者に配る権利が渡し手にあるのか不明。
#3清潭洞128-4の審議申請書——名無し・日付ズレ・歯抜け
  • 建築主・設計事務所・施工者の名前が21ページのどこにもない
  • 表紙の申請日(2019.10.10)とファイル名の日付(2021.12.23)が約2年ズレている。
  • 目次には13分野が並ぶが、実際に入っているのは6分野だけ(構造計画書・消防計画書・駐車計画等が欠落)。
  • あくまで「申請書」であり、審議に通ったかどうかの情報はない。
#4清潭ティーザー——「投資判断に使うな」と自分で書いてある草案
  • 表紙に「当社投資審議委員会の承認を経ていない草案であり、投資判断の根拠資料には使えない」と文書自身が明記
  • 貸し手・投資家・事務受託会社などの社名がすべて空欄(箱だけの構造図)。
  • 2018年時点で売買は「協議完了」のみ。認可・着工・分譲はすべて「予定」。
  • 印刷ページ番号に欠番(19の次が21)。1ページ抜き取られた痕跡の可能性。
#5大邱ティーザー——社外秘の草案が流出、数字も合わない
  • DRAFT印+「Strictly Private & Confidential(社外配布禁止)」印付きの草案。それが日本の個人にまで流れてきている。
  • 数字の不整合が複数:戸数が本文513戸に対し添付の施工意向書は520戸。敷地面積が3種類(23,787/23,842/23,698㎡)並立。
  • 売上表の「合計」がアパート分の金額と同額で、オフィステル・店舗分を足し忘れている疑い。この場合、記載の利益率(14.47%/17.45%)は過大。
  • 用地買収は未完了(民有地の19.6%が未契約、うち2筆は地主が行方不明)。
  • ハンファ建設・大宇建設の「施工参加意向書」は、土地確保と許認可の完了を前提条件とする、撤回可能で6か月で失効する紙。施工の約束ではない。

5過去物件の構造チェック用データ——建築費の検算に使える数量

「過去物件が事業として破綻していないか」を自分で検算するための、資料から抜いた数量。金額が書かれているのはティーザー2本(#4 #5)のみで、図面2本(#1 #2)と審議図書(#3)に工事費の記載はない。

案件延床面積規模・構造総事業費うち工事費
論峴洞106#1 #2・201817,469.83㎡5,284.62坪地下4階/地上22階SRC造+RC壁式記載なし記載なし
清潭洞128-4#3・20196,371.02㎡地下2階/地上12階RC造記載なし記載なし
清潭洞82-7#4・201830,567.14㎡9,246.56坪地下5階〜地上7階×2棟3,019億ウォンうち土地1,396億937.6億ウォン
大邱 書斎里875#5・2021100,891.91㎡30,519.80坪地下3階/地上最高39階2,475.9億ウォン支出合計1,407.3億ウォン
文書記載の工事費を坪単価に直すと(工事費÷延床坪数)
清潭洞82-7
2018・地下5階の高級低層
1,014万ウォン/坪
大邱 書斎里875
2021・最高39階の超高層
461万ウォン/坪

計算根拠:清潭=937.63億₩÷9,246.56坪(文書自身も「工事原価は坪当計10.14百万₩」と記載しており一致)、大邱=1,407.27億₩÷30,519.80坪。2021年の39階建て超高層を461万₩/坪で建てる想定が現実的かどうかは、建築の専門判断に委ねたい検算ポイント。さらに大邱の文書は建築費の備考に「坪当430.2万₩」と書いており、記載金額との割り算(461万₩)と合わない——単価か金額のどちらかが誤っている。用途・年次・地下深さが違うため2本の直接比較はできない。為替換算はしていない。

大邱案件(#5)の支出内訳(文書記載値)

支出合計 2,475.9億ウォンの内訳
工事費(建築費)
1,407.3億
土地費
695.6億
その他事業費
114.6億
金融費
113.5億
販売費
99.4億
分担金
40.8億
諸税金
4.7億

売上は「約2,894億ウォン」と記載されているが、この合計はアパート分単体の金額と同額で、オフィステル(245.5億)・店舗(155.2億)を足し忘れている疑いがある(§4)。収支表自体の検算が必要な資料ということ。

6投資家向けホテルのトラブルの型と、今回の状況

報道ベースで確認できる型は4つ。①海外実績を謳って集金する型、②区分所有型リゾートが頓挫・破産する型(ニセコで2025年に負債100億円超の実例)、③地権者への用地買収圧力型、④家賃保証型。

今回の状況は「地権者への買収話+海外実績の提示」で、①と③の要素を併せ持つ。この組み合わせそのものの摘発事例は見つからなかったが、「実績資料を求めたら、検証しにくい外国語の他人名義の草案が出てきた」という出方は、実績偽装の型と矛盾しない。

7相手に要求すべきもの——これが出ないなら答えは出ている

  1. 広島の計画そのもの事業計画書、配置図・平面図・面積表(ボリューム検討段階でもよい)、事業収支。建築費の概算検証はこれが来てから。
  2. 事業主体の正体正式法人名と登記(日本法人なら履歴事項全部証明書、韓国法人なら法人登記簿謄本)、代表者名。
  3. 資金の裏付け融資の意向書、出資者の構成。
  4. 買収対象の範囲対象地の範囲図。取得済みの土地があるならその登記。
  5. 韓国実績の照会可能な形完工物件の正式名称と地番。地番さえあれば건축행정システム「세움터」で建築許可・使用承認の有無を照会できる。

ポイントは、どれも本当に動いている事業なら即座に出せるものだということ。渋る・別の資料でかわす・急かす、のいずれかが返ってきたら、それ自体が答えになる。