広島市内でのホテル開発の話に伴い「過去実績」として提示された韓国語PDF5本(計125ページ)を全ページ読解し、公開情報と突き合わせた結果の報告。
5本すべてが韓国国内の別案件(ソウル3案件+大邱1案件)の資料で、用途はアパート・オフィステル(事務所兼用住宅)。125ページ中、日本・広島・ホテルへの言及はゼロ。
4案件を公開情報(報道・公示)と突き合わせたが、地番・規模まで一致して「実際に建った」と確認できたものはない。しかも5本は発行元がバラバラの寄せ集めで、「誰の実績なのか」を示す事業者名がどこにもつながらない。
大邱の投資勧誘資料の発行元。韓国の電子公示・求人・事業者番号照会・報道のどこにも出てこない。実在の確認には韓国の法人登記簿の照会が必要(下の§2)。
今回の本丸。資料に名前が出てくる法人を全部拾い、公開情報で実在・実績を確認した。
| 法人 | 資料内での立場 | 公開情報での確認結果 |
|---|---|---|
| PACIFIC PROPERTY퍼시픽프라퍼티 | 大邱資料の発行元(投資勧誘の主体) | 痕跡ゼロ 韓国の電子公示(DART)・求人・事業者番号照会・報道すべてゼロ件。類似名の別会社は複数あるが関連なし。 |
| IGIS資産運用이지스자산운용 | 清潭ティーザーの発行元 | 実在(大手) 韓国最大級の不動産資産運用会社。ただし当該文書は「投資審議委員会未承認の草案」と表紙に自己申告した2018年の紙で、同社の与信を今回の話に接続する根拠にはならない。 |
| (株)ソギョン建築士事務所(주)서경건축사사무소 | 論峴洞図面の設計者 | 実在 ソウルの建築設計事務所として実在。ただし設計者が実在することと、その図面を第三者が「自分の実績」として配ってよいことは別問題。 |
| ハンファ建設・大宇建設한화건설・대우건설 | 大邱資料に添付された「施工参加意向書」の発出者 | 実在するが非拘束 大手として実在。ただし意向書は「土地確保・許認可完了」を前提条件とする撤回可能・6か月失効の文書で、施工の約束ではない(§4)。 |
| 清潭洞128-4の建築主・設計者 | 審議申請書の当事者のはず | 記載なし 21ページのどこにも法人名・個人名がない。 |
「その会社」——広島の開発を持ち込んでいる事業者——の名前は、5本のどこにも出てこない。つまりこの資料は、渡してきた側と実績とをつなぐ鎖が最初から切れており、実績の証明としての価値がない。
地面師かどうかの断定は材料不足でできない。ただし「実績を求めたら、検証しづらい外国語の・他人名義の・古い草案が出てきた」というのは、実績偽装の典型的な出方と矛盾しない。
※「痕跡ゼロ」=Web検索で見つからなかったという意味で、不存在の証明ではない。韓国は法人登記簿謄本・国税庁ホームタックスの事業者登録照会で法人の実在が正式に確認でき、建築行政システム「세움터(セウムト)」で地番から建築許可・使用承認を照会できる。相手が韓国実績を主張するなら、この照会に耐える情報(正式法人名・地番)を出させるのが最短。
| # | ファイル | 正体 | 対象地・用途 | 日付 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 개요.pdf1ページ | 設計概要書(図番A-006) | ソウル江南区論峴洞106番地外アパート29世帯+オフィステル11戸、地下4階/地上22階 | 2018年 |
| 2 | 전체평면도.pdf13ページ | 同案件の各階平面図(A-039〜051) | 同上 | 2018年 |
| 3 | 청담동128…심의도서21ページ・スキャン | 建築計画審議申請書 | ソウル江南区清潭洞128-4外アパート18戸、地下2階/地上12階 | 2019.10.10※ファイル名は2021.12.23 |
| 4 | 청담…Teaser.pdf40ページ | 投資家向け概要書(ティーザー) | ソウル江南区清潭洞82-7(暁星ヴィラ敷地)共同住宅56戸+店舗等225室、地下5階〜地上7階の2棟 | 2018.07 |
| 5 | 서대구달성서재1차.pdf50ページ | 投資家向け概要書(DRAFT印付き) | 大邱広域市達城郡多斯邑書斎里875一円アパート513世帯+オフィステル76室、最高39階 | 2021.08.25 |
最も新しい文書でも受領の約5年前、図面は約8年前。開発の世界では地価・工事費・許認可の前提がすべて変わっている年数で、現在の事業の裏付けとしては古すぎる。
| 案件 | 実在・完工の裏付け | 詳細 |
|---|---|---|
| 論峴洞106#1 #2 | 取れず | 地番・規模が一致する報道・公示が見つからない。設計事務所は実在。 |
| 清潭洞128-4#3 | 取れず | 該当する審議の記録・報道が見つからない。 |
| 清潭洞82-7 暁星ヴィラ#4 | 半分だけ | 「暁星ヴィラの再建築」自体は実在し完工(2019年入居)。ただし報道の地番とティーザーの地番(82-7)が一致せず、この文書の計画が実行された裏付けは取れない。 |
| 大邱 書斎里875#5 | 取れず | 該当事業の報道・公示が見つからない。 |
※Web検索(韓国語・日本語・英語)の範囲。「取れず」=不存在の証明ではない。白黒つけるなら세움터での地番照会(§1末尾)。
「過去物件が事業として破綻していないか」を自分で検算するための、資料から抜いた数量。金額が書かれているのはティーザー2本(#4 #5)のみで、図面2本(#1 #2)と審議図書(#3)に工事費の記載はない。
| 案件 | 延床面積 | 規模・構造 | 総事業費 | うち工事費 |
|---|---|---|---|---|
| 論峴洞106#1 #2・2018 | 17,469.83㎡5,284.62坪 | 地下4階/地上22階SRC造+RC壁式 | 記載なし | 記載なし |
| 清潭洞128-4#3・2019 | 6,371.02㎡ | 地下2階/地上12階RC造 | 記載なし | 記載なし |
| 清潭洞82-7#4・2018 | 30,567.14㎡9,246.56坪 | 地下5階〜地上7階×2棟 | 3,019億ウォンうち土地1,396億 | 937.6億ウォン |
| 大邱 書斎里875#5・2021 | 100,891.91㎡30,519.80坪 | 地下3階/地上最高39階 | 2,475.9億ウォン支出合計 | 1,407.3億ウォン |
計算根拠:清潭=937.63億₩÷9,246.56坪(文書自身も「工事原価は坪当計10.14百万₩」と記載しており一致)、大邱=1,407.27億₩÷30,519.80坪。2021年の39階建て超高層を461万₩/坪で建てる想定が現実的かどうかは、建築の専門判断に委ねたい検算ポイント。さらに大邱の文書は建築費の備考に「坪当430.2万₩」と書いており、記載金額との割り算(461万₩)と合わない——単価か金額のどちらかが誤っている。用途・年次・地下深さが違うため2本の直接比較はできない。為替換算はしていない。
売上は「約2,894億ウォン」と記載されているが、この合計はアパート分単体の金額と同額で、オフィステル(245.5億)・店舗(155.2億)を足し忘れている疑いがある(§4)。収支表自体の検算が必要な資料ということ。
報道ベースで確認できる型は4つ。①海外実績を謳って集金する型、②区分所有型リゾートが頓挫・破産する型(ニセコで2025年に負債100億円超の実例)、③地権者への用地買収圧力型、④家賃保証型。
今回の状況は「地権者への買収話+海外実績の提示」で、①と③の要素を併せ持つ。この組み合わせそのものの摘発事例は見つからなかったが、「実績資料を求めたら、検証しにくい外国語の他人名義の草案が出てきた」という出方は、実績偽装の型と矛盾しない。
ポイントは、どれも本当に動いている事業なら即座に出せるものだということ。渋る・別の資料でかわす・急かす、のいずれかが返ってきたら、それ自体が答えになる。